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あんじゅう 三島屋変調百物語事続:
三島屋変調百物語シリーズ
Audible評価:158件 ☆4.9/5
Amazon評価:457件 ☆4.5/5
江戸の街を舞台に紡がれる、心を揺さぶる怪異譚
宮部みゆきの江戸怪奇譚連作集「三島屋変調百物語」第2弾、『あんじゅう』は、不思議な物語を集めた珠玉の一冊です。
本作は、「逃げ水」「藪から千本」「暗獣」「吠える仏」の4つの物語で構成されています。
「逃げ水」
奉公に出された男の子の周りでは水が逃げる。
困り果てた店の者はおちかのもとを訪れそんな話をし、男の子の出身地で伝わる「お旱(ひでり)さん」という神様の仕業だと言います。
男の子は厳重に封印されていたおひでりさんを解放してしまい、それからは常におひでりさんと一緒に居る状態に。
彼の周りでは水瓶に貯めた水、井戸の水、用水の水などあらゆる場所で水がなくなってしまいます。
おちかは彼を三島屋で預かることにして交流を深めるうちに、おひでりさんとその土地の本来の繋がりと、彼との絆を知ることになります。
「藪から千本」
三島屋の隣のお店には妙齢の娘が一人おり、なかなか縁談が決まらずにいました。
ようやく縁談が決まり娘が家を出た後、隣家のお内儀がおちかのもとを訪ねてきます。
なぜこれ程までに娘の縁談が遅れたのか。
それは姑や双子の姉妹の存在が絡み合い、呪いや幽霊騒動が巻き起こっていたからでした。
お内儀はおどろおどろしいことの顛末を語り始め、おちかは親子を苦しめる人間の業を知ることになります。
「暗獣」
近隣の人々から「幽霊が出る」と噂されるいわくつきの屋敷に越してきた老夫婦。
幽霊などはなから信じていない二人でしたが、徐々に屋敷に住む黒い何かの存在に気づきます。
それは闇を纏めたようなもので夫婦はそれを「くろすけ」と呼んで交流を始めました。
夫婦は懐くくろすけを可愛く思い慈しんでいましたが、月日が経つにつれてくろすけがだんだんと小さくなることに気づきます。
くろすけがどのような存在か調べていた夫はある事実に気づき、くろすけを大事に思うからこそ夫婦はある悲しい決断をすることに。
「吠える仏」
今度の変わり百物語の語り手は偽坊主。
彼が若い頃に長く滞在した村は実り豊かで村人はとても親切でしたが、ある日一人の男が姿を現したことにより村人の恐ろしい一面を見ることになります。
男は山神様へ実りの感謝のために選ばれ、家族とともに山中に閉じ込められていました。
しかし、厳しい暮らしの中で妻とお腹の子は命を落とし、男は変わってしまいます。
村人から疎んじられていた男がどんな病も治す御仏様の見つけることができるようになると、だんだんと男を信奉するようになります。
村人は全員、男を信奉するようになり、終にある悲劇が起こり…
本作の魅力は、その奥深いストーリーと登場人物たちの繊細な感情描写にあります。
江戸の風景が広がる中で繰り広げられる怪異譚は、ただの怖い話ではなく、人間の心の奥底にある感情や絆を描き出します。
シリーズを通じて、時代物の雰囲気とともに、宮部みゆきならではの巧みな語り口が楽しめます。
心を揺さぶる感動と、不思議な物語が詰まった『あんじゅう』を、ぜひ手に取ってみてください。
「あんじゅう」はオーディブルで聴くことができます。
運動中、家事の最中、移動中に手を使わずに読書ができます。
私は家事の最中、散歩中に読了しました!
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感想
月日の流れとともに窮地を救ってくれた神様への感謝が薄れ扱いがぞんざいになり、寂しく過ごしていたおひでりさん。
人間の存在を待ち望みようやく念願かなったのに、人と一緒にいることができないくろすけ。
切ない気持ちになりますが、それでも人と交流する描写には心温まるものがあり優しいお話でした。
藪から千本は人間のどろどろした内面が前面に出てくるお話でこえ~となり、吠える仏は男の変貌ぶりはもう間違いなくゾッとする怪異譚ですね。
変わり百物語のお話はもちろん面白いですが、おちかを始めとする三島屋の人たちや周囲の人たちの普段のやり取りも面白く、ほほえましい日常に安心します。
読み応え抜群の作品です!
気になった方はぜひ読んでみてください。