「芸能界」あらすじ
著者： 染井 為人
Audible評価：371件 ☆4.4/5
Amazon評価：21件 ☆4.0/5
華やかさの裏に潜む真実を暴く7つの物語が紡ぐ、エンターテインメントの光と影
俳優やお笑い芸人、マネージャーなど、「芸能界」と呼ばれる場所で働く人々の姿をリアルに描いた7つの短編集です。
著者の元芸能マネージャーの経験を活かし、きらびやかな舞台の裏側に潜む人間模様が鮮やかに浮かび上がります。
1.「クランクアップ」
黒い噂で業界から見放され、長年在籍したプロダクションを退所しようとしている俳優。
彼のもとに破格のギャラで出演を依頼する自主制作映画のオファーが来ます。
素人丸出しの監督や演者、スタッフにイラつきながらも俳優としての誇りを持ちながら演技する彼に恐怖のラストシーンが訪れます。
彼に待ち受ける未来とは。
2.「ファン」
人気女優を育て上げた辣腕マネージャーが、新たに担当するのはピン芸人と新人アイドルグループ。
人気女優のマネージャーという立場を後輩に譲り、新たな挑戦に日々奮闘する彼を襲ったのは担当するピン芸人と新人アイドルグループのスキャンダルでした。
そのスキャンダルの出所を探るうちに気づいた真実は恐るべきもので…
3.「いいね」
長年芸能界で活躍するベテラン女優がInstagramを始めることに。
彼女の投稿には「いいね」がたくさんつき、ネットニュースにも取り上げられるようになります。
「いいね」の数が増えること、バズることに快感を覚えるようになった彼女は片時もスマホを手放せなくなりだんだんと露出が増えるように。
プロダクションの人々や、娘の言葉にも頑なに耳を貸さない彼女の行く末は。
4.「終幕」
若い俳優の登竜門ともいえる演劇集団を作り上げた女性プロデューサー。
彼女が可愛がるのは俳優たちだけ。
過去に結婚詐欺でお金をだまし取っていた彼女は、今も劇場に足を運ぶ女性たちを金づるとして見下し優越感に浸ります。
俳優たちをわが物のように可愛がっていた彼女は、新しく入ってきた新人俳優に夢中になるように。
請われるままに彼を新しい舞台の主役に抜擢しますが、待っていたのは衝撃の結末でした。
5.「相方」
容姿を弄るネタで30年笑いを取ってきた漫才コンビ。
しかしコロナや時代の変化によって笑いを取れなくなってきたことに不安と苛立ちを思えます。
その苛立ちは長年いっしょにやってきた相方にも向けられることに。
なぜ自分ばかりが苦労しないといけないのか、と。
そんな彼の心を和らげたのはとあるファンから長年送られてくる手紙でした。
6.「ほんの気の迷い」
下積みを経てだんだんと人気が出て来た若手俳優。
しかし、その活躍とは裏腹に彼は悩みを抱えていました。
本来の自分と俳優としての自分のギャップ、距離ができていく友人たち、そして家族の問題。
不安定になった彼はついSNSの誹謗中傷を見てしまいさらに追い詰められていきます。
7.「娘は女優」
震災で家族を失い大事な一人娘と二人暮らしをする父。
ひょんなことから娘は芸能活動を始めることになりましたが父は大反対。
娘が勉学をおろそかにせず、真面目に芸能活動に取り組んでもいつまでも反対しています。
だんだんとメディアへの露出が増えた娘に町の人々は復興イベントのPRを頼みます。
父は断固拒否の姿勢でしたが、結局、娘はPRへ協力し復興イベントは大盛況に。
ここで父は初めて娘の本当の気持ちを知ることになります。
この短編集には、エンターテインメント業界の光と影、成功と挫折、人間の弱さと強さが詰まっています。
それぞれの物語が独立しており、異なる視点から芸能界を描いているため、一つ一つが新鮮で興味深いです。
華やかなステージの裏にある現実を知ることで、読者は芸能界の新たな一面に触れることができますよ。
エンターテインメントの世界に興味がある人はもちろん、社会の裏側に興味を持つ人にもおすすめの一冊です。
「芸能界」はオーディブルで聴くことができます。
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私は家事の最中、散歩中に読了しました！
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感想
最初の2話はハラハラドキドキのお話でした。
何よりも怖いのは人間だ、と思わせる作品です。
周囲の人々の言葉によってギリギリのところで踏みとどまる人、逆に追い詰められた状況で周囲の人に最後の一押しをされる人、人の言葉は救いにもなるし毒にもなるなと改めて感じるお話もありました。
最後は子を思う親、親を思う子の話で温かい気持ちで読み終わりました。
この作品のナレーターは男性一人でしたが、女性の声や複数の男性の演じ分けに違和感がなくとても聞きやすかったです。
短編集なのでちょこちょこ聴いても話が分かりやすいですし、何よりお話に引き込まれてとても面白かったです！
気になった方はぜひ読んでみてください。
